5つ星の本棚

大好きな本をレビュー&オススメする書評ブログです。

36.『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

 

胸の内側をカリカリ引っかかれるような読み心地。

 

 

▼『わたしを離さないで』はこんな作品!

ノーベル文学賞受賞作家 カズオ・イシグロの小説

臓器提供用に作られたクローン人間がいる世界観

・2016年には綾瀬はるか主演でドラマ化

 

 

この表紙がたまらないんですよね…。

 

 

『わたしを離さないで』のあらすじ

 

舞台は1990年代末のイギリス。

「介護人」である主人公・キャシーは「提供者」の世話をしながら、自身の奇妙な少女時代の記憶を辿りつつ、自分たちの秘密を紐解いていく。

 

「提供者」とは、臓器提供するために生み出されたクローン人間である。

「提供者」は臓器提供が時が来ると、手術で臓器を摘出される。それは何度かに分けて、「提供者」が死ぬまで繰り返される。

そんな「提供者」の介護を行うのが、キャシーが務める「介護人」。「介護人」もまた、「提供者」のひとりであった…。

 

センセーショナルなテーマと淡々とした語り口、ほろ苦いストーリーがイギリス・日本で人気を呼んだ名作文学。

 

 

 

『わたしを離さないで』の感想・レビュー

 

私が『わたしを離さないで』を最初に知ったのは、綾瀬はるか主演の日本版ドラマです。

衝撃的でしたね…。

 

臓器提供用の人間が存在することで一定の安心感を得られた世界。

しかし、主人公たちは「臓器提供する側」の人間で…。

クローン人間たちは精神的にも肉体的にも普通の人間と変わらない。なのに世間は人間とクローン人間を完全に区別しているし、クローン人間側には臓器提供に伴う死への恐怖が与えられ続ける。

主人公の友人(演-水川あさみ)が最後の臓器提供に向かう際、主人公に言い放った「わたしを離さないで!」という叫びが今も耳にこびりついています。

 

 

そんなドラマ版を最後まで見てから、私は原作の『わたしを離さないで』を購入しました。

読んでいくと、日本ドラマ版『わたしを離さないで』はが原作にかなり近い設定でありつつ、舞台が日本となっても違和感がないよう、また日本人が感情移入しやすいよう作られていることが分かり、改めて日本ドラマ版のクオリティの高さを実感しました。

 

そのうえで驚いたのが、原作『わたしを離さないで』の淡々とした語り口です。

日本ドラマ版では、クローン人間側の抵抗というか、不条理・異常な世界観への反抗を感じるシーンが多々ありました。

しかし原作では、ほとんどの人が「臓器提供する側の人間がいる世界」の常識にどっぷり浸かっており、「提供者は臓器提供をして死ぬ運命」という前提ありきでストーリーが進んでいくように感じました。

これが本当に…胸の内側をカリカリ引っかかれるような読み心地、とでも言うべきでしょうか…。

ヘタに嘆かれるより、不条理だと叫ばれるより、よっぽど辛かったです。

 

ラストシーンも何とも言えない読み心地で…。

全体的にほろ苦さが漂う作品でした。

 

 

 

『わたしを離さないで』はイギリスの作品であり、作品の舞台もイギリスなのですが、作者カズオ・イシグロは『わたしを離さないで』について、2015年までの自身の作品の中で最も「日本的」な小説だと評しています。

(訳者さんの腕のおかげもあるでしょうが)実際私も「違和感がなく読みやすい」と感じたので、興味が湧いた方、そして日本版ドラマをご覧になった方はぜひ。

 

35.『シンプル・プラン』スコット・スミス

 

 

「悪事」へのハードルが下がっていく…。善良な一般市民の転落を描いた秀作。

 

 

▼『シンプル・プラン』はこんな作品!

アメリカの小説家スコット・スミスの処女作

スティーヴン・キングに「本年のベスト・サスペンス作品」と称賛された名作

超現実的ホラーとでも言うべき読み心地。まさにサスペンス…

 

 

 

 

シンプル・プラン』のあらすじ

 

主人公ハンク・ミッチェルは、ある雪の日の夕方、その友人と共に両親の墓参りに向かった。

両親の死因は自殺。借金を苦にしてのことだった。

 

兄は未婚で無職。

その友人もまた、家庭こそあるものの無職。

しかしハンク自身は会計士として真面目に働いており、家には出産を控えた妻が待っていた。

 

そんな彼らが墓参りの道すがら見つけたのは、森に墜落した小型飛行機の残骸。

中には乗組員の死体と、440万ドルもの大金があった。

 

大金を見た兄と友人は「金を持ち帰ろう」と言い出す。

ハンクは最初こそ反対するものの、やがてふたりの説得に応じ、金を持ち帰ることを了承する。

しかし、無策で持ち帰るわけではない。

ハンクはふたりを納得させるため、そしていずれ金を安全に山分けするために、ごくシンプルな計画=シンプル・プランを立てた…。

 

 

 

シンプル・プラン』の感想・レビュー

 

私が『シンプル・プラン』を手に取ったきっかけは、大好きなドラマ『SPEC』です。

『SPEC』ファンならもうお判りでしょう…。

そう、『SPEC』にも「シンプル・プラン」というキーワードが登場するのです!

………それだけです!!

タイトルで一本釣りされた形で購入に至りました。笑

(もちろん『SPEC』と小説『シンプル・プラン』の間には何の関係もありませんのでご注意くださいネ)

 

 

 

さて、肝心の『シンプル・プラン』の感想ですが。

主人公の気持ちは分からないでもない。

でも主人公に引く。そんなストーリーでした。

 

最初こそ真面目で大人しい印象の主人公ですが、大金に関してけっこう能動的な動きを見せるんですよね。

そもそも、大金を持ち帰って山分けするためのシンプル・プラン」を提唱したのが主人公ですから。

読んでて「お前が言い出すんかい!?」とビックリしました。

まあ、他ふたりが馬鹿ですから、唯一地に足着いている主人公が先導しなければ始まらないという側面もありますが…。

 

 

 

主人公は最初、善良で平凡な一般市民でした。それは間違いありません。

だからこそ、ストーリーが進むにつれて、主人公の中で「悪事へのハードル」がどんどん下がっていくのがすごくリアルで怖かったです。

そのハードルはガクッと下がることもあれば、色々問題が生じて、それを乗り越えようと苦悩する中で自然に下がっていくこともあり。

どちらにしても、機会さえあれば自分もこうなるかもしれない恐怖みたいなものは、『シンプル・プラン』を読んでいる間、常に感じました。

 

 

 

「根は善良な一般人」が「身の丈に合わない大金」を「不法な方法で入手」してしまった以上、シンプル・プラン』に真のハッピーエンドはあり得ません。

ただ、どういった結末に着地するのかは……ぜひご自身の目で確かめてみてください。

 

 

【寄り道】「はてなブロガーに10の質問」に答える

はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問

 

 

今回は思いっきり寄り道して、はてなブログさんのお題「はてなブロガーに10の質問に答えていこうと思います。

前回の寄り道とは違い、「読書」そのものにはほとんど関係ない記事になりますので、興味がある方だけお読みいただければ幸いです!

 

▼前回の寄り道

issa5hoshi.hatenablog.jp

 

それではいってみましょう!

 

 

はてなブロガーに10の質問

 

ブログ名もしくはハンドルネームの由来は?

★ブログ名の由来

個人的に「★5!」と感じた書籍をレビュー&オススメするブログ、という意味で付けました。

コンセプトがハッキリ決まっていたおかげか、すんなり決まったブログ名です。

 

★ハンドルネームの由来

昔飼っていた愛猫の名前から、一字取ってちょっとひねって考えました。

小学生の頃からず~っと使ってる、もはや自分自身とは切り離せない愛着深い名前です。

 

 

はてなブログを始めたきっかけは?

Twitterで「140字縛り書籍レビュー」をして遊んでいたところ、とても楽しくなってしまったのがきっかけです。

「140字じゃ足りねぇ…もっと語りてぇ!!」となり、勢いで始めました!

 

▼「140字縛り書籍レビュー」の一例

 

 

自分で書いたお気に入りの1記事はある?あるならどんな記事?

『魔法の料理 かおすキッチン』を紹介した記事なんか、けっこう気に入っていますね!

『かおすキッチン』が持つ勢いや個性をなかなか表現できたのではと思っています。

あらすじでも『かおすキッチン』という漫画を端的に表現できたと感じ、満足しています(笑)

issa5hoshi.hatenablog.jp

 

 

ブログを書きたくなるのはどんなとき?

素晴らしい本に出会った時や、自分の本棚を眺めていて「この本やっぱり大好きだな!」「この本、もっと有名になってもいいのに…」と思った時などにブログを書きたくなります!

 

あと、他の趣味や家事がイマイチ進まないな、という時にもブログを書きたくなります。

ブログを始めるまではそういう時、小説や漫画を読むともなくボーっとめくっていたのですが、その空白にブログ執筆がハマりこんでいる感じです。

有意義ですね!

ブログを書き始めてから読書にさらに熱が入るようにもなったし、良いことずくめです。

 

ちょっと話が逸れましたが、朝にもブログを書きたくなったりします。

私は記事をワーッと書き貯めして、朝に推敲&投稿しているのですが、その勢いで別の記事を書くことも多いですね。

 

 

下書きに保存された記事は何記事? あるならどんなテーマの記事?

今見たら16記事でした!

そのうちほぼ完成しているのが3記事、中途半端に埋まっているのが6記事、他はタイトル(というか今後レビューを書きたい本の名前)だけ、という配分です。

テーマはもちろん!ぜんぶ「オススメの書籍紹介」です!

 

 

自分の記事を読み返すことはある?

「そういえばあの記事のココって…」と急に思い立って読み返すことはあります。

そういう時、大抵少し記事を手直ししますね!

記事の書き方が定まるまではけっこう頻繁に読み返し&手直ししていましたが、最近はそうでもないかな?

 

 

好きなはてなブロガーは?

も、申し訳ない…現時点では、自分のブログや他の趣味などで手いっぱいで…!

でも気になっている方はちらほら見えますし、落ち着いてきたら色んなブログを覗いてみたり、勉強させて頂いたりしたいです!

 

 

はてなブログに一言メッセージを伝えるなら?

ブログほぼ初心者だったのですが、とても使いやすいサービスで驚きました!

ありがとうございます!

 

 

10年前は何してた?

手書きブログ」で絵を描いていました。

懐かしい!

あと、友人と共同で、お互いへの私信だらけのブログを運営していたりもしました。

ほぼ交換日記ですね!

 

 

この10年を一言でまとめると?

戦い…ですかね…!

相手は病気だったり、ヤバイ上司だったり、なかなか変われない自分自身だったりしました…。

最後の最後に重めの回答!(笑)

でも「挑戦」や「愛(主に友とにゃんこ♡)」の10年でもありましたよ!

 

 

 

以上です!

答えてみて思ったんですが、「〇〇に10の質問」ってすごい懐かしいですね!

手書きブログ」の時代によくやったなぁ…。

バトンとか回って来たりして…。

 

 

ノスタルジックな気持ちに浸りつつ、今回はこの辺で。

お付き合い頂き、ありがとうございました~!

 

34.『火のないところに煙は』芦沢央

 

読書初心者でも読みやすい、上質なホラー×ミステリー

 

 

▼『火のないところに煙は』はこんな作品!

・5つ+1の怪談話をまとめたミステリー小説

・ホラー×ミステリー×メタフィクション

・初回限定版はカバー裏にホラー掌編収録!

 

 

 

 

『火のないところに煙は』のあらすじ

「私」こと作者・芦沢央は、「神楽坂を舞台に怪談話を書かないか」という突然の依頼に驚く。

神楽坂はかつて「私」が恐ろしい体験をした、苦い思い出のある地だった。

その出来事のせいで、「私」は親友を介して「私」に救いを求めてきた女性、そして親友自身をも失っている。

 

迷った末、「私」は依頼を承諾し、かつての出来事の真実を求めて執筆する。

すると「私」の怪談を見た読者や同業者から、様々な怪談話が持ち込まれるようになった。

そうしてできた5つの短編作品。「私」はその5編の怪談話をまとめた単行本を出すことになったが…。

 

 

 

『火のないところに煙は』の感想・レビュー

『火のないところに煙は』の文庫化、待ってました!!

私は芦沢央の『悪いものが、来ませんように』や『いつかの人質』などが大好きなので、『火のないところに煙は』もずっと読んでみたかったんです…!

 

さらに初回限定版『火のないところに煙は』のカバー裏にはホラーな掌編も収録されており、なんとも贅沢。

掌編はいわゆる人怖系ですが、所々フォントサイズが不自然に大きい文字があり、その文字を組み合わせると……!!

本編とのつながりを感じさせる、怖くてニクい演出でした。

 

 

 

『火のないところに煙は』は「全編作中作」とも取れる構成で、物語は「私」こと作者自身の視点を介して語られます。

つまり主人公=作者なんですよね。

 

さらに『火のないところに煙は』では、作者がTwitterで実際に投稿した呟きが怪談の説得力を増すための要素として利用されていたりします。

 

▼『火のないところに煙は』本編で取り上げられた呟き

 

つまり上記ツイートは『火のないところに煙は』のための仕込みのひとつ…だと思われるのですが、このツイートが実在することによってストーリーの信ぴょう性が高まり、「これは"作中作"?それともドキュメンタリー…?」と疑いたくなってしまいます。

現実と小説との境界線を壊すこの手法、たまりません。

知れば知るほど上質なメタフィクション作品だな、と感じました。

 

 

 

『火のないところに煙は』は複数の怪談話を集めたホラー小説なのですが、丁寧な語り口と読みやすい文章(芦沢作品の魅力のひとつです!)のおかげか不思議とライトな読み心地で、気付いたら一気読みしちゃうタイプの作品です。

 

そして『火のないところに煙は』はミステリー小説でもあり、5つ(+最終話)の短編小説からなる短編集なのですが、それぞれの話にはミッシングリンクが存在します。

個々のストーリーの真相は少々推理しやすいですが、それを差し引いても面白く、全編通して惹き込まれる作品です。

そして最終話で、散らばった伏線をガサッ!と回収するさまは圧巻で、鳥肌が立ってしまいました。

ミステリー小説として、そしてホラー小説として、初心者さんにも自信をもってオススメできる作品です!

 

 

 

ちなみに、先ほど私は「『火のないところに煙は』にはライトな読み心地」と書きましたが、読み終わった直後には背後に女性の気配を感じてゾワッとしました

読みやすさというオブラートに包まれたホラー小説は、普通に怖い小説よりも厄介なのかもしれませんね…。

 

 

 

 

 

▼「全編作中作」な小説がお好きな方には、こちらの記事もオススメ!

issa5hoshi.hatenablog.jp

 

 

33.『花もて語れ』片山ユキヲ

 

声には「力」がある。

 

 

▼『花もて語れ』はこんな作品!

・「朗読」がテーマ

・実在の名作文学&童話がいっぱい!

・読書がもっと好きになる漫画

 

 

 

『花もて語れ』のあらすじ

 

主人公・佐倉ハナは口下手で引っ込み思案。

就職を期に上京し、社会でひとり奮闘するも、失敗ばかりで落ち込む日々…。

 

そんな中、偶然聞こえてきたのは、美しい朗読の声。

子供の頃「朗読」によって大きな壁を乗り越えた経験があるハナは、導かれるように「朗読」の世界に飛び込む。

 

宮沢賢治の「やまなし」、芥川龍之介の「トロッコ」、新美南吉の「ごん狐」…など、実在の名作文学&童話の奥深くに触れながら、ハナの成長を見守る、強く前向きな物語。

 

 

 

『花もて語れ』の感想・レビュー

 

『花もて語れ』は、様々な名作文学&童話の魅力を強く強く引き出す素晴らしい漫画です。

『花もて語れ』を読んでいると、元の文学・童話を黙って読んでいるだけでは分からない、その文学が持つ本当の意味・解釈がダイレクトに伝わってきます。

 

私が最初に心を持っていかれたのは、『花もて語れ』1巻に収録されている「やまなし」です。

私は「やまなし」には子供の頃、国語の授業で何度も触れましたし、印象的な作品だったのでよく覚えていました。

クラムボンはわらったよ。」

クラムボンはかぷかぷわらったよ。」

をはじめ、耳(目?)に残るフレーズも多かったですしね。

 

もちろん授業の中では、「やまなし」の細部に触れてきました。だから私は「やまなし」についてそこそこ知っているつもりだったんです。

でも全然…!全然でした…!!

 

『花もて語れ』を通して「やまなし」を読むと、今まで「そういうものだ」と流してほとんど疑問にも思わなかったクラムボン」の意味も、「二疋の蟹の子供ら」の関係性もよく分かるんです。

そしてそれらが分かると、よく知っていたはずの「やまなし」が新しい、未知の文学のように感じられて…。

まさに目からウロコが落ちるような気持ちでした。

 

 

そして凄いのは、作者・片山ユキヲさんの卓越した表現力!!

『花もて語れ』では、「本筋」と「朗読内容」とで描写方法が異なります。

朗読内容を表す部分は、絵本のようなタッチで描かれているんです。

ちょうど12巻の表紙のような感じに。

 

 

※画像が小さくてスミマセン…

 

もちろん本編では「絵本のようなタッチ」も白黒で表現されていますが、白黒な中にも鮮やかな色彩が見えてく圧倒的な表現力があり……これが「朗読」の表現として本当に素晴らしい。

「声が持つ力」、そして「"理解したうえで読む"ことの意味」が直感的に伝わってくるというか…。

あまりにすごくて、「やまなし」で泣きましたもん。

「やまなし」でですよ!?

 

 

 

『花もて語れ』は、読書がもっと好きになる漫画です。

『花もて語れ』に出会っていなかったら、私はポプラポケット文庫の「国語教科書にでてくる物語」も、ちくま文庫の「宮沢賢治全集」も、夢野久作の「瓶詰の地獄」も買っていませんでした。

(特に「瓶詰の地獄」は宝です…)

 

『花もて語れ』は読書との新たな出会いの場にもなる作品なので、少しでも興味のある方は、まずは1巻だけでも手に取ってみてください…!!

1巻が刺さったなら、きっと最後まで楽しめます。

 

32.『堕天作戦』山本章一

 

残酷でどこか美しいダークファンタジー

 

 

▼『堕天作戦』はこんな作品!

・人類と魔人が争う世界を、主人公の不死者が渡り歩く話

・世界観の説得力が凄まじいダークファンタジー

・WEB漫画総選挙2019で第3位に輝いた漫画

 

 

表紙で「好みじゃないかも」と思った方も、ぜひ以下を読んでみて欲しいです…!

 

 

『堕天作戦』のあらすじ

 

人類と魔人が争いを繰り広げる世界。

主人公である不死者・アンダーは人間側に属していたが、「再利用が効く武器」のような酷い扱いに精神がすり減り、廃人同然になったところを魔人に捕らえられた。

しかし魔神陣営でもまた、「実験」と称した処刑行為の繰り返し。

もはや人としてのほとんどの感覚が鈍磨していたアンダーだったが、彼と共に刑に処された魔人の少女・レコベルの"魔法"、そして彼女の望遠レンズで「星型の星」を見つけたことによって、意思と感覚を取り戻す。

 

そしてアンダーは、自分の不死性の謎と、空に浮かぶ「星」の謎を究明すべく、世界の放浪を始めた。

 

youtu.be

▲上記あらすじ部分が流れる『堕天作戦』の広告動画を見つけました!

 

 

 

『堕天作戦』の感想・レビュー

 

『堕天作戦』は世界観が本当に凄まじく、様々な国や勢力が関係しあっており、かなり複雑です。

しかも「人間陣営」と「魔人陣営」に分かれているだけなら単純なものを、「人魔混合の勢力」や「人間陣営だが改造人間が多く、魔人とも手を組む勢力」など、もう色んな勢力がいて、最初は何が何やら…です。

ただでさえ複雑な情勢が、物語が進むにつれ変化していきますしね。

 

作者さんの頭の中は一体どうなっているのでしょうか……頭の中にもうひとつ世界が存在しているとしか思えません。『堕天作戦』の中では、この世界とは完全に切り離され、独立した世界が完成されています

そんな少々理解が難しい世界観ですが、それが『堕天作戦』という物語から離れる要因にはなり得ない…理解できるまで何度でも読み返してしまう…そんな強い引力がある作品です。

 

 

『堕天作戦』はヒューマンドラマキャラクターの表現もまた非常に繊細で魅力的です。

戦争真っただ中な世界ということもあって、悪人率もまあまあ高いんですが、誰のことも嫌いになれないんですよね。

 

たとえば、

主人公を処刑しまくり、自分の右腕だったヒロインをも処刑したMP全振り魔人、ピロ。

ゲームのスコア数に見立てて次々に人を殺す人間の女性、ルビー。

自分の恋を貫くために、他人を操り他人の手で殺戮を繰り返す魔人の少女・ポーラ。

こんな一見ヤバイ悪人たちにも、同情できる面があり(ない人もいますが)憎めない愛嬌があって、シュールギャグや過去編が挟まるタイミングも完璧で…。

 

世界観もキャラクターの多くも、現代日本とはかけ離れた倫理観の元に成り立っているのに、感情移入先が多いんですよ、とても…。

皆幸せになってもらいたい…。

でも、それを許してくれるような世界観ではないんですよね…。

 

(ちなみに、主人公は主人公で「自分から見ればこのくらいで死ぬ方が悪い」と人間に石をぶつけたり、主人公に生きる力を与えたヒロイン・レコベルですら「知的好奇心を満たすためなら手段を選ばない」面があったりと、倫理観の欠如が見られます。善って何だろう、悪って何だろうね…。)

 

 

 

 

また『堕天作戦』は主人公・アンダーが「不死や星の謎を追う」というのが主軸のストーリーなので、

暗中模索でとにかく動く

→ヒントを見つける

→仮説を得る

→仮説が否定される

→それを足掛かりに新たなヒントを探す

→… という、ミステリー作品的な展開があるのも魅力的です。

複雑な世界観も相まって、考えながらじっくり読むのが本当に楽しい作品です。

 

 

 

惜しむらくはこの『堕天作戦』、長らく休載中(※2021年10月時点)ということですね…。

休載理由は体調不良とのことで、連載再会のめどは未だ立たず…。心配です。

山本章一先生、『堕天作戦』本当に大好きです。2冊買うくらい好きです。連載再会の日をいつまでもお待ち申し上げております…。

 

 

この記事でご興味持っていただけた方がいましたら、ぜひ!ぜひ!『堕天作戦』を読んでみてください!!

既刊5巻です!!

そして続きを待ちわびる切なさ・苦しみを共に味わいましょう!!

 

 

 

 

 

最後に、『堕天作戦』の作者・山本章一先生の読み切り漫画燃える追い人』のリンクを貼っておきます。

 

 

天才的原始人が、ネアンデルタール人の女性を追う話です。

 

ストーリー、特殊なコマ割り、後半への盛り上がり…どれも神がかっています。

私も今読み返して、鳥肌を立てたり燃えたり泣いたりしました。

リンクから無料で最後まで読めますので、ぜひ。

 

 

31.『容疑者xの献身』東野圭吾

 

ガリレオシリーズの最高傑作

 

 

 

▼『容疑者xの献身』はこんな作品!

東野圭吾のミステリー「ガリレオシリーズ」第3弾

・第6回本格ミステリ大賞などを受賞

・2008年に福山雅治主演で映画化

タイトル通りとは恐れ入った…

 

 

 

 

 

容疑者xの献身』のあらすじ

 

天才物理学者・湯川は、研究室を訪れた友人の刑事・草薙から懐かしい名前を聞く。

石神。彼は湯川の大学の同期であり、湯川が「天才」と認める数少ない人物だった。

湯川は、そんな石神が研究者ではなく、高校の数学教師という立場に収まっていることを知り驚く。

 

これも何かの縁と、石神の自宅を訪れる湯川。

彼らはお互いの存在・思考に刺激を感じ、充実した時を過ごした。しかしそれが、彼らが、腹の探り合いなしに向かい合った最後の時間となった。

なぜなら、石神は数日前にとある殺人事件に関与していたのだ。

そして事件に石神が絡んでいると知った湯川は、傍観者の姿勢を崩し、事件の謎に独自に挑み始める…。

 

 

 

容疑者xの献身』の感想・レビュー

 

私は「ガリレオシリーズ」のファンで、原作は「探偵ガリレオ」から「沈黙のパレード」まですべて読んでいます。

そのうえで言いますが、容疑者xの献身』は間違いなくガリレオシリーズの最高傑作です

 

 

私はミステリー小説が好きですが、物理的なトリックにはあんまり興味がないタイプです。

そもそもが叙述トリック好きなので、「伏線を使って何らかの形でビックリさせてもらえれば満足」というスタンスでした。

だからこそ、物理的なトリックの謎解きをほぼ探偵役に丸投げできる「ガリレオシリーズ」が大好きなんですけど。

(「ガリレオシリーズ」は「トリックには読者に解ける一般的な知識・技術を用いるべし」というミステリーの鉄則をあえて崩した作品なので、読者自身が謎解きしなくても良い話が多いんですよね)

 

でも『容疑者xの献身』は、物理的なトリックこそ読む人に衝撃を与える最大の要素になっています。

トリックは「罪を隠す」ためのものですが、『容疑者xの献身』ではある種、その前提をも突き崩ししています。

正直、叙述"以外"のトリックでこんなに衝撃を受けたのは初めてでした。

 

ストーリーはまさにタイトル通りで、「容疑者x」こと石神が持つ深い愛、そして彼が身を捧げた衝撃的な手段には強いショックと共に感動を覚えました。

容疑者xの献身』はミステリー小説として、ひとつの物語として、本当に素晴らしい大傑作だと思います。

 

 

 

 

 

ちなみに私、『容疑者xの献身』には映画版から入りました。

映画館であんなにも咽び泣いたのははじめてです。

石神(演-堤真一)の「どうして」という慟哭は、いまだ耳に残っています。

容疑者xの献身』は映画版もまた、ドラマシリーズの最高傑作と言えるでしょう…。