【寄り道】Inscryption(インスクリプション)【ゲーム感想・レビュー】
今回だけゲームの紹介をさせてください。
どうしてもこのゲームをオススメしたいんです…!!
Inscryption(インスクリプション)
※↑こちらは
steamの公式ページですが、動画は見ない方が良いかも!
ネタバレ要素があるので…
Inscryptionは、カードゲームと脱出ゲームが入り混じったサイコロジカルホラーゲームです。(情報量が多い)
ちなみに「サイコロジカルホラー」とは、プレイヤーや視聴者をじわじわ怖がらせたり、不安定にさせたりするホラーのことです。(「ドキドキ文芸部!」などのホラー表現がそれにあたりますね。)
Inscryptionは海外のインディーズゲームですが、日本語にもバッチリ対応しているのでご安心を。
プレイヤーはカードゲームを戦いながら、少しずつヒントを得て、今いる場所からの脱出を図ります。
カードゲームは、単純さと、少しずつ要素が足されていく奥深さのバランスが絶妙。
カードゲーム経験ゼロの私でも問題なくプレイできた(それどころか夢の中でもプレイするくらいドはまりした)ので、カードゲーム初心者の方でもきっと楽しめますよ。
ゲーム全体としては、音楽と効果音が異様に良いのも魅力ですね。
本当にずっと聞いていられます。
ちなみに「Inscryption」、たった410円でのサウンドトラックが丸ごと買えます。い、良いんですか……と罪悪感を覚える安さです。
でもこのゲーム、「サイコロジカルホラー」の一文からも分かる通り、ただ楽しくカードゲームをするだけでは終わりません。
選択できない「ニューゲーム」。
喋るカードの存在。
ゲームにおいて価値を持つ「歯」…。
そしてカードゲームに負けるとき、プレイヤーは「カード」の正体を知ります。
さらに、「旅の終着点」で敵を倒したとき、「Inscryption」というゲームはそれまでとは全く異なる様相を見せるのです…。
二転、三転する世界観に、ゾクッとさせられるホラー描写の数々。
そして(おそらくは)プレイヤーによって感じ方が極端に変わる独特のストーリー…。
気になった方は、ぜひ前情報なしにプレイしてみてください。
正直、このボリュームと満足感で2,050円は破格だと思います。
私はクリアまでにプレイ時間が24時間以上かかりましたし、その間絶え間なく楽しかったです。
まだまだ拾い切れていない要素があるので、気持ちが落ち着いたら2周目プレイしようと思います。
心の底から良い買い物をしました…。
なぜ「気持ちが落ち着く」のを待っているかというと…私は「Inscryption」というゲームにズタボロに泣かされたんですよね。
…さて、ここからはネタバレ全開、既プレイヤー向けな内容です。
ネタバレ全開で語る場所が欲しくて、この記事を書き始めたと言っても過言ではありません。
「Inscryption」未プレイの方はどうか以下は読まずに、まずはご自身でプレイしてみてください…。
「Inscryption」は、誰に、どの要素に重きを置くかによって、感じ方が相当変わってくるゲームだと思います。
単純にゲームとしてギミックや演出を楽しんだり、謎解きに重点を置いて世界観の解明を試みたり、ラッキー・カーダーに感情移入してよりホラーな世界に身を浸したり…。
私はというと、プレイヤーの初期デッキに入っているオコジョ君がめちゃめちゃ好きで。
だって、右も左も分からないプレイヤーに、はじめて味方側として話しかけてくれるのがオコジョ君じゃないですか。
手札に加わるたびに「ボクだよ。」とか言ってくれるのもめちゃくちゃ可愛いです。
よく考えるとオコジョ君、プレイヤーに言うことといえば、「プレイミスだな。」とか「本当にここでいいの?」とか、「ボクだよ。」を除けば批判的な内容ばっかりなんですけどね。
それでもこんなに好きなのは、オコジョという可愛い見た目のおかげか、それとも最初に味方として話しかけてくれた贔屓目か…。
そこまで好きになっちゃうと、もうカードの中でオコジョの奇形化が進んでも好きな気持ちは一切変わらず…。(心配ではあった)
「ニューゲーム」後のゲームでオコジョ君の正体、P-03くんに出会えた時は感動さえしました。
P-03くん側がめっちゃ塩対応なのは笑っちゃいましたけど。(笑)
一緒にゲームを乗り切った思い出とか一切語ってくれないの、あの人!(それはカメムシことグリモラも同じなんですけどね…笑)
そんな感じだったから、ニューゲームクリア後のフェーズでP-03くんと向き合えたときは歓喜ものでした。
拘束されてることすら嬉しい。
オコジョだった姿は見る影もありませんが、もう最初に好きになっちゃったら、相手の外見が変わっても好きな気持ちは変わらないんだなって。新発見でしたよ…(笑)
でも、今までの流れからして、P-03くんを打ち負かすのが正規ルートじゃないですか。
イヤでしたね…すごく。
ゲーム自体が面白いから、どんどん先に進みたいけど、その先にはきっとP-03くんの破滅が待っている。
なんとかしてストーリーを捻じ曲げられんか…と本気で悩みました。
途中でレシーたちが「一緒にP-03をやっつけようぜ!」みたいな提案をしてきたときも普通に断りたかったです。
いやじゃいやじゃ、私はずっとP-03くんと遊ぶんじゃ…。
でも、終わりの時はやってきて…。
何とかそれを先延ばしにしようと、敵がいなくなったマップを探索していたときです。
最後の最後にあの人、批判的な態度をちょっと引っ込めるんですよね。
「こう口にすると、変な感じがするけど…」
「一緒に色々やれたの、楽しめそうだった」
涙腺崩壊ですよ。
P-03くんを好きになってしまったプレイヤーへの救済措置ですよね…。
それから、ポツリポツリと、これまで批判してきたキャラクターたちの良い所を挙げていくP-03くん…。
ひねくれ者で批判的なロボットが、感傷的に過去を振り返るその姿…これが人間的でなくて何だというのです。
血が通わないロボットに灯る、一抹の人間的な温かみ…。
この切なさ…この愛おしさ…。
手塚治虫の「火の鳥」を読んで育った方なら共感して頂けるのではないでしょうか…。
ちなみに、このタイミングでマップ探索を続けると、ある場所でリアルオコジョの写真が印刷されたカードの画像が現れるんですよね。
これにも泣きました…。
共にレシーと戦ったあの時間について、P-03くんはほとんど言及してくれなかったけど…
P-03くんにとってもちゃんと、特別な時間だったのかなって…。
(「カードたちの痛みは本物」だからいい思い出ばかりじゃないでしょうけど…身勝手ながら嬉しかったです)
と、ここまでが私にとっての涙のピークだと思っていたのですが、涙腺崩壊はP-03の死以降も続きます。
ここにきて、再びレシーと相まみえるんですよね。
こちらの手元には、レシーを打ち負かしたあのデッキ。
そして、こちらがカードを1枚、また1枚と繰り出すたびに、「そのカードのことはよく覚えている」「このカードは強かった」「あのプレイは上手かった」と、振り返りながらレシーが褒めてくれるんです。
泣く……。
正直、レシーを好きなプレイヤーって少ないと思うんですよ。
面白半分に人の命を天秤にかけるような人物ですし、実際、疑似的とはいえこっちは何度も殺されていますからね。
いくらゲームが楽しいとはいえ、彼に好敵手という印象は持ちにくいです。
(※2022/2/4追記 私が好きなゲーム実況プレイヤーさんと、私の友人は「レシーが好き」と言っていました。少数派は私の方だったか……)
その印象を、最後にひっくり返してくる。
崩壊するゲームの中で、死に向かう体で、勝ち負けすら度外視して、ただ最後まで一緒にゲームを遊ぶことだけを求めてくるんです、レシーは。
その末に、握手を求め、差し出される手…。
もうね、強く握り返しましたよ。
でも意外にも、一番ギャン泣きしたのは、マグニフィカス戦。
(手元にデュエルスタンバイなディスクが出現した時は笑っちゃいましたけど…笑)
レシー、グリモラと握手を交わしてきたカーダーは、マグニフィカスとは握手ができないんですよね。
握手をするより先に、マグニフィカスが死んでしまうから。
でも最後にマグニフィカスは、
「まだ死ねない」
「きみと握手をしなければ…」
と、命尽きる瞬間までこちらに這いずってくるんです。
もうね、どんなに駆け寄ってその手を取りたかったか…。
レシー、グリモラ、そしてマグニフィカス…
私は彼らを決して好きではなかったはず(マグニフィカスは謎が残りすぎて何ともいえないですが…)でしたが、最後には「友達だ、きみたちは…」という気持ちになっていました。
P-03の「一緒に色々やれたの、楽しめそうだった」発言からラストまで、「このシーンが泣けるピークだろうな」と思う場面の連続で、気付けば1時間くらい泣きっぱなしでプレイしていました。
最初は「一風変わったホラーゲーム」としてプレイし始めたのに、こんなに大好きなキャラクター(もちろんP-03のことです)ができたり、こんなに感情が揺さぶられるとは思ってもみませんでした…。
「Inscryption」は間違いなく、私にとって一生忘れられないゲームになりました。
本当にプレイして良かった…。