45.『青野くんに触りたいから死にたい』椎名うみ
幽霊×純愛×土俗ホラー
▼『青野くんに触りたいから死にたい』はこんな作品!
・『月刊アフタヌーン』で連載中(2021年11月現在)の人気作
・電波系かと思いきや120%純愛作品
・本格的な土俗ホラー要素が魅力!
『青野くんに触りたいから死にたい』のあらすじ
女子高生・刈谷優里(ゆうり)は、隣のクラスの青野龍平と会話を交わしたことから、「わたし彼氏ができちゃうのかもしれない!」と舞い上がる。
そして優里が思い切って告白すると、なんと青野はそれを受け入れ、ふたりは晴れて付き合うことになった。
ところが、付き合って2週間で、青野は交通事故で他界してしまう。
悲しみのあまり後追い自殺をしようとする優里。そんな彼女の前に、死んだ青野が幽霊となって現れた。
死が別ったはずのふたりが深め合う愛。
しかし、優里が軽い気持ちで提案した「憑依」をきっかけに、平穏な日常に影が差し始める…。
『青野くんに触りたいから死にたい』の感想・レビュー
私は正直、『青野くんに触りたいから死にたい』は導入部分のインパクト一発勝負の漫画なのかな、と予想していましたし、それでも良いと思って買いました。
(それくらいインパクトが強いんですよね。ヒロインが初めて男子と喋ったからって「彼氏ができちゃうかも!」と舞い上がるぶっ飛び感といい、彼氏がすぐ死んじゃったあげく幽霊になって戻って来るテンポの良さといい)
でもね。
導入部分の面白さがピークかと思いきや、巻を重ねるごとにどんどんどんどん面白くなっていくんですよ。
導入部分はちょっと電波っぽいと思ったら、
ちょっとエッチな純愛物語になっていって、
かと思えばなかなかグロ目なホラー演出があったり、
登場人物が増えるごとにヒロインの魅力や成長が垣間見えたり…。
そして3巻でヒロインたちが住む地域にまつわる迷信「四ツ首様」の要素が登場してから、『青野くんに触りたいから死にたい』は一気に土俗ホラーの様相を呈し始めるんです。
何を隠そう、私は土俗ホラー作品が大好きでして!!
『青野くんに触りたいから死にたい』が土俗ホラー物だとは夢にも思っていなかった分、3巻以降のストーリーにはそれまで以上に大興奮しっぱなしでした。
(作中で登場する「懺悔懺悔、六根清浄(さんげさんげ、ろっこんしょうじょう)」という言葉は実際にあるフレーズのようですね。作品の説得力が増しちゃいますね…)
それと、『青野くんに触りたいから死にたい』は、安楽椅子探偵的なポジションの美桜(みお)ちゃんによる推理パートがまた本当に良くて…!
作中のホラー要素を分解しながら、ひとつひとつ推理によって紐解いていくんですよね。
意味不明と思われた要素が、「そういうもの」で片づけられずに、根拠を示されながら明らかになっていく。
読んでいて楽しすぎます。
(小説『リング』シリーズや『ぼぎわんが、来る』などが好きな人は絶対楽しめると思いますよ!)
『青野くんに触りたいから死にたい』は、キャラクターや人間模様もまた魅力的なんですよね。
誰かがすごく強くて、傷付いたキャラクターがその強さと優しさにすがるんじゃなくて、みんなが弱くて優しくて、その弱さをお互いに補い合いながら前に進もうともがくんです。
『青野くんに触りたいから死にたい』を読んでいると、人間ってこうあるべきだよな、というか、こうありたいなぁ…という気持ちになります。
あと一枚絵がすごく良い…。
特に扉絵!
『青野くんに触りたいから死にたい』の扉絵はそのストーリーの内容を端的に表していることが多く、扉絵を見ればどんな内容の話だったかが分かるようになっています。
続きモノの話では、扉絵が連作になっていたりも…。
これが「センスがある」ということか…。と、『青野くんに触りたいから死にたい』の扉絵を見るたびに思います。
『青野くんに触りたいから死にたい』は、ホラー漫画好きも、恋愛漫画好きも、どちらも満足させるような作品だと思います。
そして土俗ホラー好きには間違いなくブッ刺さる作品だと思うので、未読の方はぜひ!!
▼土俗ホラー好きさんにはこちらの作品もオススメ!