31.『容疑者xの献身』東野圭吾
ガリレオシリーズの最高傑作。
▼『容疑者xの献身』はこんな作品!
・第6回本格ミステリ大賞などを受賞
・2008年に福山雅治主演で映画化
・タイトル通りとは恐れ入った…
『容疑者xの献身』のあらすじ
天才物理学者・湯川は、研究室を訪れた友人の刑事・草薙から懐かしい名前を聞く。
石神。彼は湯川の大学の同期であり、湯川が「天才」と認める数少ない人物だった。
湯川は、そんな石神が研究者ではなく、高校の数学教師という立場に収まっていることを知り驚く。
これも何かの縁と、石神の自宅を訪れる湯川。
彼らはお互いの存在・思考に刺激を感じ、充実した時を過ごした。しかしそれが、彼らが、腹の探り合いなしに向かい合った最後の時間となった。
なぜなら、石神は数日前にとある殺人事件に関与していたのだ。
そして事件に石神が絡んでいると知った湯川は、傍観者の姿勢を崩し、事件の謎に独自に挑み始める…。
『容疑者xの献身』の感想・レビュー
私は「ガリレオシリーズ」のファンで、原作は「探偵ガリレオ」から「沈黙のパレード」まですべて読んでいます。
そのうえで言いますが、『容疑者xの献身』は間違いなくガリレオシリーズの最高傑作です。
私はミステリー小説が好きですが、物理的なトリックにはあんまり興味がないタイプです。
そもそもが叙述トリック好きなので、「伏線を使って何らかの形でビックリさせてもらえれば満足」というスタンスでした。
だからこそ、物理的なトリックの謎解きをほぼ探偵役に丸投げできる「ガリレオシリーズ」が大好きなんですけど。
(「ガリレオシリーズ」は「トリックには読者に解ける一般的な知識・技術を用いるべし」というミステリーの鉄則をあえて崩した作品なので、読者自身が謎解きしなくても良い話が多いんですよね)
でも『容疑者xの献身』は、物理的なトリックこそ読む人に衝撃を与える最大の要素になっています。
トリックは「罪を隠す」ためのものですが、『容疑者xの献身』ではある種、その前提をも突き崩ししています。
正直、叙述"以外"のトリックでこんなに衝撃を受けたのは初めてでした。
ストーリーはまさにタイトル通りで、「容疑者x」こと石神が持つ深い愛、そして彼が身を捧げた衝撃的な手段には強いショックと共に感動を覚えました。
『容疑者xの献身』はミステリー小説として、ひとつの物語として、本当に素晴らしい大傑作だと思います。
ちなみに私、『容疑者xの献身』には映画版から入りました。
映画館であんなにも咽び泣いたのははじめてです。
石神(演-堤真一)の「どうして」という慟哭は、いまだ耳に残っています。
『容疑者xの献身』は映画版もまた、ドラマシリーズの最高傑作と言えるでしょう…。