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23.『密室殺人ゲーム王手飛車取り』歌野晶午

 

 

不謹慎で面白い、リアル推理合戦ミステリー。

 

 

 

▼『密室殺人ゲーム王手飛車取り』はこんな作品!

歌野晶午の「密室殺人ゲーム」シリーズの1作目

・殺人トリックを考え、実行したうえで出題する推理ゲームの物語

・いろんなジャンルのミステリーを楽しみたい方に!

 

 

 

 

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』のあらすじ

 

主人公・頭狂人(トウキョウジン)はダースベイダーのマスクをかぶり、パソコンのウェブカムの前に座っている。

「頭狂人」とはもちろん本名ではない。「ゲーム」で使っているハンドルネームだ。

AVチャットに集う他のメンバーも、変装などで容姿をぼかし、個性的な名前を使って素性を隠している。

 

彼らが興じるのは「殺人推理ゲーム」。

それもただのゲームではない。

彼らは考えたトリックを、人を殺すことで実現し、それを問題に仕立てて他のメンバーに出題するのだ。

 

 

彼らは「ゲームの一環として」人を殺す。

人が殺されれば、当然ニュースにもなる。

そのニュースもまた、彼らにとってはゲームのアクセントのひとつでしかない。報道された事実は、推理を組み立てるうえで重要な要素となるのだ。

 

繰り返されるリアル殺人ゲーム。

彼らが行きつく先にあるのは…!?

不謹慎で面白い、リアル推理合戦ミステリー。

 

 

 

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の感想・レビュー

 

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』のミソは、物語の開始時点ですでに、「リアル推理ゲーム」が何度か行われたことがある、という点です。

つまり主人公も全然凶悪犯罪者なんですよね。

 

私は『密室殺人ゲーム王手飛車取り』を読み始めるとき、無意識に主人公の善性というものを期待してしまっていたのですが(主人公の出題ターンが後半だから尚更です。主人公だけは人を殺さないで済むのではないか…とか)、

それがあっさり否定されたのが結構衝撃的でした。

 

 

 

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』は不謹慎なテーマ、そして人殺し集団とは思えない(いや…逆に人殺し集団"らしい"か!?)軽快な掛け合いが面白いですが、ミステリージャンルのバラエティパックともいえるようなところもまた魅力です。

 

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』では、主人公たちが各々の好みのミステリージャンルで勝負を仕掛けてきます。

たとえば、

ミッシングリンク(連続殺人事件の被害者たちの共通点は?)

怪奇ミステリー。

トラベルミステリー。

犯人当て……などなど。

要するに『密室殺人ゲーム王手飛車取り』は、1冊で幾通りものミステリージャンルを味わえる、とってもお得な小説なんです。

 

中には叙述トリックを駆使した、あっと驚くどんでん返しもあり…。

ぜひ最後まで読んでみてほしいミステリー小説です。

 

 

 

ここからは余談ですが…

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』のラストシーンには、おそらく賛否両論あるかと思います。

私も最初読んだときには少し引っかかってしまいましたが、何度か読み返していくうちにじわじわと味を感じるようになっていきました。

 

 

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』には続編があり、『密室殺人ゲーム2.0』『密室殺人ゲーム・マニアックス』と続いていきます。

 

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の続きである『密室殺人ゲーム2.0』では、相変わらず「頭狂人」をはじめとするメンバーが和気あいあいとゲームに興じており、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』を読み切った人は「!?」と混乱することと思いますが…

『密室殺人ゲーム2.0』の中で、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の最後について真実が明かされますので、本当の結末を知りたい方はぜひ。

(ただ、謎を謎のままで取っておくのもアリだと思います…!)