19.『お孵り』滝川さり
土俗ホラー好きにはたまらない!タイトル回収も見事なホラー小説。
▼『お孵り』はこんな作品!
・第39回横溝正史ミステリ&ホラー大賞読者賞受賞作品
・「生まれ変わり」が信仰されている村でのストーリー
・純・和風ホラー!ミステリー要素もアリ
『お孵り』のあらすじ
主人公・橘佑二は、婚約者・乙瑠(いちる)の故郷の冨茄子村(ふなしむら)を訪れた。結婚のあいさつをするためだ。
ところがある夜、佑二はその村で異様な儀式を目撃してしまう。
実は村では生まれ変わりが信じられており、子を授かった女性はその異様な儀式に参加しなければならないのだ。
佑二は儀式に嫌悪感を抱き、村の出身者である乙瑠も同意したが、なんと乙瑠は生まれ変わり自体は頑なに信じていた。
そのため乙瑠は、村と距離を置きたい気持ちはあるが、子を授かったら必ず村に戻らなければならない、という意思を佑二に伝える。
しばらくのち、乙瑠は妊娠。
そして約束通り村で出産することになったのだが、生まれた子供は乙瑠ともども、村に囚われてしまう…。
佑二は冨茄子村から、異様な信仰から家族を取り戻せるのか。
どろどろとした恐怖とテンポのいいストーリーが魅力の土俗ホラー小説。
『お孵り』の感想・レビュー
ミステリー要素のあるホラー作品はイイですよね。
『リング』しかり、『ぼぎわんが、来る』しかり。
『お孵り』なんて、出だしからすでにミステリー調ですもん。とある事件の新聞記事を抜粋した1ページ目には、否応なしにワクワクさせられます。
謎解き部分は、ミステリー作品が好きな人なら割と解きやすいかと思いますが、分かったうえで読んでも十二分にゾッとさせられる巧みなストーリーです。
『お孵り』の舞台は現代なのですが、これが土俗ホラーというジャンルとうまく噛っています。
むしろ科学の発展した「現代」で「生まれ変わりが信仰されている」というギャップの大きさが、事の異様さを強調していてとても良いです。
その異様な世界に、平凡な一般人(主人公)がひとり投入されたときの心もとなさ。
さらに、自分と同じ感覚を持っていると信じていた妻も、根っこの部分は村の風習に染まっていると分かった時の「えっ……」という感覚。ホラー演出として最高です。
『お孵り』はストーリーのテンポもかなり良く、私は2日で一気に読み切ってしまいました。
タイトル回収も実に鮮やかで、テーマ自体はドロドロホラーですが、読後感は爽やかと言っても良いくらい。
ホラー初心者さんにもオススメできるホラー小説です!!