5.『告白』湊かなえ
イヤミスなのに、ある意味爽快…。
▼『告白』はこんな作品!
・イヤミス(初心者にもオススメ)
・私刑や復讐がテーマ
「イヤミス」というのは、「読んだ後イヤな気持ちが残るミステリー作品」のこと。
読む人を選ぶジャンルともいえますが、良くも悪くも心を動かされるエンターテインメント性が私は好きです。
『告白』は、中学校内で幼い娘を亡くした女教師が、「犯人は、自分が受け持つクラス内にいる」と爆弾投下することから広がる波紋を描いています。
「私刑」もテーマのひとつになっていますね。
イヤミス作品として名高い小説ですが、私はこの作品には不思議な爽快感を覚えます。
とても考えさせられるラストではあるのですが、読後に残るのは「イヤな気持ち」とは少し違うんですよね。
なので、イヤミス初心者に導入編としてもオススメしたい作品です。
『告白』のあらすじ
市立S中学校、1年B組…3学期の終業式の日。
女教師・森口悠子は自分が受け持つクラスの生徒たちに、「自分の娘を殺した犯人はこの中にいる」と告げ、さらには時限式の復讐を実行済みという衝撃発言を投下し、教職を辞して中学校を去る。
話の中で森口は匿名を用いたが、クラスメイト達には森口が指す「犯人」が誰かはすぐに伝わった。
彼女が告げた犯人は2人おり、内1人はそのまま不登校に。しかしもう1人は、新学期がはじまると平然と登校を再開した。
何食わぬ顔で学校に現れる犯人Aに対し、クラスメイト達の正義感が暴走を始める…。
「私刑」や「復讐」の是非を問う問題作。
この作品は章ごとに語り手が変わる。
主犯格である犯人A、森口の告白のあと不登校になった犯人B、彼らのクラスメイト、犯人Bの母親…そして最初と最後の章を女教師・森口が担っている。
真実はひとつだが、視点によって見え方が変化するさまは圧巻。
『告白』の感想・レビュー
私が『告白』に「爽快感」のようなものを感じる理由のひとつに、ノンストップで駆け抜けたくなる読みやすさがあると思います。
特に第1章は、ほぼすべて女教師・森口が生徒に語るセリフのみで構成されており、読みやすさは随一です。
まさに教師の話を黙って聞いている生徒のような気持になります。「先生がなにかとんでもない話を始めるかもしれない」という予感で胸がいっぱいの、生徒のような気持に。
他の章も、1人称の物語と言うよりはモノローグに近いものが多く、章ごとの視点や視点主の考え方が一貫しているため非常に読みやすいです。
女教師・森口の爆弾発言で幕を開けた『告白』という作品は、やはり森口による衝撃的な言葉によって幕を下ろします。
「イヤミス」と呼ばれるだけあって「後味スッキリ!」とはいきませんし、「イヤミス」のゆえんたるシーンは作品全体に散りばめられています。
登場人物の行動・考え方に共感できる部分があればあるほどイヤな気持ちになるでしょうね。
でも、それが『告白』を読む楽しさです。
法で裁かれない少年への復讐・私刑。
正義は誰にあるのか?
そして、犯人Aが平気な顔で学校に来る理由は…?
森口の静かな語り口で締めくくられる、鳥肌モノのラストシーンは必見です。