46.『らせん』鈴木光司
『リング』の恐怖が確信に変わる。
▼『らせん』はこんな作品!
・鈴木光司のサスペンス・ホラー小説
・貞子でお馴染み『リング』の続編
・ホラーというよりとっても怖いSFミステリー
『らせん』のあらすじ
監察医・安藤は、謎の死を遂げた高山竜司の解剖を担当した。
安藤にとって、竜司は大学時代の友人だった。
安藤が解剖した竜司の遺体からは、謎の肉腫が発見される。
そして解剖を終えた遺体の腹からは、詰め込んだ新聞紙が不自然にはみ出ていた。
その新聞紙に書かれた暗号めいた数字は、ある言葉を暗示していた。
「RING」———リング。
それが竜司からのメッセージと思えてならない安藤は、竜司の死の原因を追い始める。
一方、竜司と交際していた舞は、竜司の部屋で一本のビデオテープを発見する…。
『らせん』の感想・レビュー
まさか『リング』の続編が、『リング』で探偵役だった人物の遺体解剖から始まるとは…。
そして前作『リング』で登場したあの人たちがまさかの死を遂げており、前作主人公の奮闘を見てきた身としてはかなりショッキングでした…。
『らせん』はミステリー色が強い
私は『リング』は「ミステリアスな最恐ホラー作品」だと思うのですが、『らせん』はとっても怖いSFミステリー作品、という印象を受けました。
『リング』もミステリー色が強い作品でしたが、『らせん』はさらにミステリー要素が濃厚になっています。
『リング』で残った謎を、科学的・医学的な根拠を明示しながら紐解いていくのが『らせん』なんです。
私は根っからの文系なので、『らせん』で示された「根拠」がどれくらいリアルなものなのか分からないのですが、やはりフィクション作品で科学的な根拠らしきものを詰められると、鳥肌が立っちゃいます。
また『らせん』では「暗号解読」の要素がストーリー全体に散りばめられています。
これが作品のミステリアスさをより色濃いものにしているんです。
主人公が目の前の暗号を、ああでもないこうでもないとアイデアを出しては捨ててを繰り返しながら紐解いていく過程は本当に面白く、ミステリーが苦手な人でも楽しめると思います。
『らせん』や『リング』の怖さについて
『リング』といえば例のビデオテープですよね。
貞子が井戸から出てくるやつ。(原作では出てこないけど)
呪いのビデオテープはダビングによって増殖し、「不幸の手紙」のように拡散されていきます。
それが『リング』に底知れない恐怖を感じるポイントのひとつです。
でもそれ以上に怖いのが、ビデオテープの内容の描写です。
『リング』で描かれるビデオテープの内容は、「貞子が井戸から出てくる」という映像化作品のイメージよりももっと複雑怪奇。
なのに頭の中で異常なまでに鮮明なイメージが浮かぶんです。
私は『リング』でビデオテープの描写を読んでいる間、「今、私は読んではいけないものを読んでいるのではないか」という恐怖に囚われました。
そしてその恐怖は、『らせん』を読むことで確信に変わります。
作者が自分の表現力の巧みさを完全に把握し、利用して、第四の壁(つまり「小説」と「読者」の間の壁)を崩しにかかってくるんですよ。
『らせん』の中でとあるキャラクターが、「(『リング』にまつわる事件について)傍観者でいようとした。事の成り行きを楽しんでさえいた」と話します。
そんな彼が「自分もすでに事件の当事者だった」と知る時、読者も同様の恐怖に襲われるんです。
このあたりは読んでいて本当に戦慄しました…。
『らせん』は読みやすさも魅力!
『らせん』は『リング』に比べて非常に読みやすかったのも嬉しいところ。
『リング』ではひとつの場面で視点主がたびたび入れ替わりましたが、『らせん』では視点がほぼ固定になったので、読んでいて疲れないんですよね。
ホラー感でいえば『リング』の方が上だと思いますが、読みやすさは『らせん』の方が断然上だと思います。
たぶん「『リング』が至高」と思っている人と同じくらい、「『らせん』の方が好き」と感じる方も多いはずです。
『リング』を読んだ(もしくは映画を観た)ことがある方は、ぜひ続編『らせん』も読んでみてください!
私は『ループ』(『らせん』の続編)買ってきます!!