48.『八つ墓村』横溝正史
「金田一耕助シリーズを読んだことがない方」にこそオススメ。
▼『八つ墓村』はこんな作品!
・2021年時点で10度映像化された超人気作品
・土俗的な伝承、連続殺人、サスペンス、宝探し…等々盛りだくさん!
『八つ墓村』のあらすじ
天涯孤独の青年・辰弥のもとに、親族が辰弥を探しているという報せが入った。
辰弥が弁護士の立ち合いのもと、辰弥の祖父という人物に会ってみると、祖父はその場で血を吐いて死んでしまった。
さらに、辰弥を迎えに来た女性から、辰弥が、かつて八つ墓村で32人もの村人を殺した男の息子であることを明かされる。
意を決して八つ墓村の地を踏んだ辰弥を中心に、恐ろしい連続殺人の幕が切って落とされた…。
『八つ墓村』の感想・レビュー
面白すぎる…。
展開は最初からノンストップで、まず語り手・辰弥の祖父を名乗る男が、辰弥の目の前で死亡。
そして辰弥が八つ墓村を訪れてからは、辰弥の兄、兄の法要の席に訪れた僧、法要の訪問客…などなど…辰弥が息つく間もなく人が死ぬこと死ぬこと…。
それも、人死には決まって辰弥のすぐそばで起こるのです。
しかも連続殺人が、辰弥が村民たちから「あれがあの"32人殺し"の息子…」という目で見られている中で起こるものだから、状況は最初から辰弥に不利なのです。
この恐怖!この孤独…!
張り詰めた緊張と戦慄が、語り手を通して常に読者に伝わってきます。
語り手(辰弥)と探偵役(金田一耕助)がほとんど別行動という点もまた良いんですよね。
『八つ墓村』では、語り手にとって探偵役は、頼れる存在じゃないんです。心の支えになってはくれないんです。
語り手はあくまで自分の手で、真実を探り当てようともがかなければならない…。
この絶え間ない緊張感がたまりませんでした。
しかし、そんな中だからこそ、人の温かみに心動かされる部分も多々あって…。
『八つ墓村』はサスペンス色が非常に強い作品ですが、意外なことに人情に泣かされるシーンもしばしばありました。
この記事の「あらすじ」ではかなり端折りましたが、『八つ墓村』はストーリーも謎も、かなり複雑に入り組んでいます。
しかし、それはリアルな人間同士が息づいているがゆえの複雑さで…紐解かれた瞬間すんなり腑に落ちるものばかり。
そこもまた、この作品のすごい所です。
また、事件そのものの真実はひとつですが、オチはいくつも用意されていて、物語の終盤で段階で何度も「あっ!?」と驚かされたり、「そうだったのか…」と泣かされたり…。
本当に、最初から最後まで面白すぎる小説でした。
『八つ墓村』は金田一耕助シリーズの1作目ではありませんが、『八つ墓村』から入るのは全然アリだと思います。
だって面白すぎるから…!
*私自身、八つ墓村から入りました。
「前シリーズを読んでいなければ分からない」という点はほぼありませんでしたよ!
『八つ墓村』では、土俗的な言い伝え、かつて起こった大量無差別殺人、そしてある法則にのっとった連続殺人…と、「金田一耕助シリーズ」のイメージにピッタリな血みどろでミステリアスなテーマに加え、「宝探し」という要素も大きなカギになってきます。
他の作品と並べるのは失礼かもしれませんが、江戸川乱歩の『孤島の鬼』やPlayStation 2ソフト『かまいたちの夜2』にも近しい要素があり、この2作品が好きな方は『八つ墓村』にも絶対ハマると思いますよ!
もう本当に、とにかく面白い作品なので、ぜひ一度お手に取ってみてください…!!