28.『アクロイド殺し』アガサ・クリスティー
叙述トリックの金字塔。「映像化不可能」の面白さ。
▼『アクロイド殺し』はこんな作品!
・アガサ・クリスティー「ポアロシリーズ」の中の1作
※3作目にあたるが、『アクロイド殺し』だけ読んでも問題ナシ!
・「フェア・アンフェア論争」を巻き起こした、色んな意味で歴史に残る名作
・叙述トリックを駆使したどんでん返しが特徴的
『アクロイド殺し』のあらすじ
村の名士・アクロイド氏が刺殺体で発見された。
前の晩アクロイド氏と会っていた「わたし」ことシェパード医師は、検死を行う中で、アクロイド氏が持っていた手紙が消えていることに気付く。
容疑者の最有力候補であるアクロイド氏の養子は行方をくらませ、捜査は低迷。
そんな中、「わたし」の隣家に最近住み始めた奇人が、実はかの名探偵・ポアロその人であることが判明する。
ポアロは事件究明に乗り出すと、助手に「わたし」を指名し…。
アガサ・クリスティーの代表作のひとつに挙げられる名作ミステリー小説。
『アクロイド殺し』の感想・レビュー
やっぱり『アクロイド殺し』は面白い!
先日久しぶりに読み返しましたが、結末を知っているとまた違った楽しみ方ができますね。
これがどんでん返しモノの楽しさであり、また切ないところでもあり…(初見時の衝撃は、2度目以降では絶対に得られませんからね…)。
『アクロイド殺し』は叙述トリックーーーつまり書くべき事実をあえて書かなかったり、読者の先入観を利用したりして、読者の推理を誤った方向に誘導するミステリーの手法ですねーーーを駆使したミステリー小説で、常識破りな結末から、発表当時「フェア・アンフェア論争」を引き起こした、ある種 問題作でもあります。
そしてこの叙述トリックこそ、『アクロイド殺し』が「映像化不可能」と言われるゆえんです。
※「映像化したやん」という話についてはのちほど!
でも『アクロイド殺し』の面白さも、やっぱり叙述トリックによるところが大きいんですよね。
結末の意外性はずば抜けていますし、1世紀近くも前の小説ですが、今読んでも「オォッ」となります。
よく読むと伏線は(当然ながら)きちんと張られていますし、読者が真相に気付く余地も存分に与えています。『アクロイド殺し』がフェアかアンフェアかで言ったら、やっぱりフェアなんじゃないかと思うんですよね。
様々な形のミステリー小説が登場した今だからこそ言えるのかもしれませんが。
でも『アクロイド殺し』は、どんでん返しも驚きながら、ポアロが最後に犯人に(暗に)言い渡す提案もまた、結構衝撃的です。
時代を反映した提案と言いますか…現代ではまず考えられない話です。
私は数年ぶりに読み返したとき、どんでん返しよりもそっちに「えっ!?」となってしまいました…(笑)
色んな意味で衝撃的な結末…ぜひあなたの目で確かめてみてください…!
さて、ここからは余談です。
『アクロイド殺し』は「書き手のミスリード」によって成立するミステリー作品なので、長年「映像化不可能」と言われてきました。
でも映像化されましたね。しかも日本で!
タイトルを日本風に、舞台設定も日本に変えるという大胆な方法で制作されたドラマ、『黒井戸殺し』。
私は正直、最初は「どうなの…?」「もしやパロディ…?」と警戒しながら『黒井戸殺し』を見たのですが、想像以上に原作に忠実で驚きました。
叙述トリックも見事に再現されていて、真相が明かされるシーンでは歓声を上げてしまいました。
あれは良い…。原作ファンも納得のドラマだと思います!
『アクロイド殺し』のポアロにあたる方の演技がちょっとクセが強いですが(笑)、原作で言うシェパード医師役が大泉洋なのがナイスすぎて、最後まで抵抗なく見られました。
『アクロイド殺し』を読んでいる間も、いい意味でよぎりますもん…大泉洋が…。(笑)
「小説よりも映像作品の方が好きだわ」という方には、『アクロイド殺し』よりも『黒井戸殺し』の方が見やすいと思います!