25.『鼻』曽根圭介
ホラーであり、ミステリーでもあり…。
▼『鼻』はこんな作品!
・日本ホラー小説大賞短編賞受賞作
・人間が「鼻」の有無で差別される世界が舞台
・ミステリーのようなどんでん返しアリ
『鼻』のあらすじ
この世界では、人間は2種類に分けられていた。
鼻を持つ「テング」と、鼻のない「ブタ」だ。
テングはブタに迫害され、最終的には"特別区"に送られる。
外科医の「私」はそんなテングを救うべく、違法な「テングからブタへの転換手術」を決意するが…。
一方、刑事の「俺」は、少女の連続行方不明事件を追っている。
自己臭症の「俺」は、自分の臭いを馬鹿にされているという思い込みから、一般人への暴行を繰り返す異常性を持っていた…。
「私」と「俺」の物語が交錯するとき、恐るべき真実が明らかになる。
『鼻』の感想・レビュー
『鼻』はずっと前から気になっていた小説で、表紙も新たに再版されたのでようやく購入できました…!
読んでみたら期待以上の内容で…。再版を待っていた甲斐がありました。
『鼻』は3作からなる短編集なのですが、その中でも表題作『鼻』はやっぱり抜きん出て素晴らしい作品だと思います。
外科医の「私」と刑事の「俺」のストーリーは、全く交わりようのない物語に見えるので、読んでいるあいだ先の展開が気になってしょうがなかったです。
鼻の有無で人間を分ける異常な世界観や、刑事という肩書を持ちながら正気とは思えない「俺」の異常性など、恐怖要素が常に付きまとい、じわじわとした怖さに包まれました。
そして『鼻』のラストにはどんでん返しともいえる展開が待っていて…。
ミステリー要素が強いホラー小説とでも言うのでしょうか。かなり上質な作品でした。
ちなみに、『鼻』に収録されている『受難』という作品も好きです。
『受難』は助かりそうで助からない場所に監禁された男の話で、不条理系ホラーと言うのかな?読んでいる間、心も肌もジリジリするような作品でした…。
恐怖度で言えば『鼻』といい勝負だと思います。
『鼻』や『受難』の読み心地は、ミステリー…しかも「イヤミス(読後イヤな気持ちになるミステリー作品のこと)」に近いホラー小説、という感じでした。
『鼻』も『受難』もイヤミスというわけではありませんが、イヤミス好きならほぼ確実に、両方楽しめると思いますよ!