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26.『殺戮にいたる病』我孫子武丸

 

 

平凡な家庭が孕む狂気。

 

 

 

▼『殺戮にいたる病』はこんな作品!

・「かまいたちの夜」シナリオで有名な我孫子武丸の代表作

叙述トリック&どんでん返しあり

・猟奇殺人がテーマ。グロいのが苦手な方は要注意!

 

 

 

『殺戮にいたる病』のあらすじ

 

東京の繁華街で、猟奇的殺人を繰り返すシリアルキラーが出現した。

ターゲットは女性。

犯行が重なるにつれ、手口の凄惨さは増していく。

 

そんな猟奇殺人を中心に、3人の視点を移り変わりながら物語は進んでいく。

事件を追う元・警部。

「息子は犯罪者なのではないか」と疑う母親。

そして「犯人」。

彼らの手が真相を掴むとき、世界はひっくり返る。

 

 

 

『殺戮にいたる病』の感想・レビュー

 

グロいです。

犯人視点の描写が克明すぎる…。

しかも犯人は、殺人を繰り返すうちに死体の一部を切り取って持ち帰り、あることに使うということまでやり始めるんですが、本人がそれを異常と思っていないところが心理的にグロいとでもいいますか…けっこうキます。

 

持ち帰った死体の一部を冒涜しながら、「なんて可哀想なんだ、自分…」くらいのテンションですからね、犯人。

いや……。ヒェ……。と思いながら読んでました。

 

でも犯人の気持ちが分からないでもないのが何とも怖いです。

いや、死体をどうこうという部分ではなくて。

何というか、犯人が抱えている孤独感みたいなものや、胸に空いている穴を埋めてみたり、でもやっぱり埋まらなかったり…という繰り返しが、言ってしまえばすごく「普通の人」の感覚に近くて…。

『殺戮にいたる病』では、常人には理解できない心理を、常人に理解できるように書いてあるのかなぁ、と感じました…。

 

 

 

ここまでの感想だけ見るとホラー小説みたいですが、『殺戮にいたる病』はミステリー小説としてかなりの傑作です。

事件を追う刑事、息子を疑う母親、そして犯人。

この3者の視点をリレーしながらストーリーが進んでいくのですが、「刑事」と「母親」がじりじりと「犯人」に手を伸ばしていく様子がすごく巧みに描かれていて、その間に挿入される「犯人」視点の異常性も相まってすごく面白く、ノンストップで読んじゃいました。

 

ラストのどんでん返しでは口をあんぐり開けちゃいましたね。

どんでん返しにビックリしただけではなく、おそらく作中で一番救われなかった人物の存在に胸が締め付けられ、読後はその人物にまつわる伏線について深く考え込んでしまいました…。

 

 

 

ある程度の残酷描写が平気な人で、叙述トリックやどんでん返しモノのミステリー小説をお探しの方は、ぜひ一度『殺戮にいたる病』を読んでみてください!