30.『こころ』夏目漱石
思ったよりも辛い物語だった…。
▼『こころ』はこんな作品!
・夏目漱石の代表作のひとつ
・日本で一番売れている本
・「私」と先生、そして先生とKの物語
『こころ』のあらすじ
時は明治時代末期。
海水浴をしていた学生の「私」は、浜辺で出会った「先生」と交流をはじめ、やがて先生の家ににたびたび訪れるようになる。
「私」は先生を尊敬し、よく懐いていたが、先生は人間を遠ざける性質で、「私」にも心の内を容易には見せなかった。
やがて「私」の父が倒れたという知らせが入り、「私」は先生の元を離れて帰省する。
そして父の容体がいよいよ悪くなった頃、先生から分厚い封筒が届いた。
それが先生の遺書だと気付いた私は、父を置いて汽車に飛び乗った。
先生の遺書には、先生と、先生の親友「K」に関する悲劇が綴られていた…。
『こころ』の感想・レビュー
正直、『こころ』がこんなにしんどい作品だとは思っていませんでした…。
私は恥ずかしながら、つい最近まで『こころ』について何も知りませんでした。
「先生」っていうんだから、学校の先生か何か?
「先生」がKのお墓参りをすること、「先生」とKが恋愛関係でごたごたしたらしいことは知っていたけど、それって「先生」がそんなに悔やむようなこと…?
そんな感じで読み始めた『こころ』でしたが、「先生」は実は(職業的な意味では)先生でも何でもなく、「K」にまつわるストーリーについても、「先生」の心の傷がかなり根深いことがよく分かりました。
というか日本中に知られた作品なのでネタバレしちゃいますが、親友に隣の部屋で首かっ切って自殺されたら、そしてその原因のひとつが自分の行いだったら、「先生」じゃなくても一生トラウマですよ…。
「先生と遺書」の章の後半はもう、胸が痛くてしょうがなかったです…。
さらにですよ、「先生」はKが自殺したあと、Kとのごたごたの原因ともいえる女性と結婚しているんです。
そのことを、先生の奥さんとなった女性は知らない…。
いくら先生と奥さんの関係が良好でも、いくら幸せでも、奥さんと暮らし続ける限り「先生」の心は蝕まれ続ける…。
本当に、胸を締め付けられるような物語でした。
私は『こころ』のレビューを書くにあたって、『こころ』が日本一売れている文学作品ということを初めて知ったのですが、それも納得の作品です。
心に爪痕を残すようなストーリーはもちろん、読みやすさも凄いんですよね。
100年以上も前の作品とは思えないような読み心地でした。
ただ、労働に対する考え方だとか、人の生き死にについてだとか、現代日本とは明らかに異なる価値観も散見されて、それがまた面白かったです。