35.『シンプル・プラン』スコット・スミス
「悪事」へのハードルが下がっていく…。善良な一般市民の転落を描いた秀作。
▼『シンプル・プラン』はこんな作品!
・スティーヴン・キングに「本年のベスト・サスペンス作品」と称賛された名作
・超現実的ホラーとでも言うべき読み心地。まさにサスペンス…
『シンプル・プラン』のあらすじ
主人公ハンク・ミッチェルは、ある雪の日の夕方、兄とその友人と共に両親の墓参りに向かった。
両親の死因は自殺。借金を苦にしてのことだった。
兄は未婚で無職。
その友人もまた、家庭こそあるものの無職。
しかしハンク自身は会計士として真面目に働いており、家には出産を控えた妻が待っていた。
そんな彼らが墓参りの道すがら見つけたのは、森に墜落した小型飛行機の残骸。
中には乗組員の死体と、440万ドルもの大金があった。
大金を見た兄と友人は「金を持ち帰ろう」と言い出す。
ハンクは最初こそ反対するものの、やがてふたりの説得に応じ、金を持ち帰ることを了承する。
しかし、無策で持ち帰るわけではない。
ハンクはふたりを納得させるため、そしていずれ金を安全に山分けするために、ごくシンプルな計画=シンプル・プランを立てた…。
『シンプル・プラン』の感想・レビュー
私が『シンプル・プラン』を手に取ったきっかけは、大好きなドラマ『SPEC』です。
『SPEC』ファンならもうお判りでしょう…。
そう、『SPEC』にも「シンプル・プラン」というキーワードが登場するのです!
………それだけです!!
タイトルで一本釣りされた形で購入に至りました。笑
(もちろん『SPEC』と小説『シンプル・プラン』の間には何の関係もありませんのでご注意くださいネ)
さて、肝心の『シンプル・プラン』の感想ですが。
主人公の気持ちは分からないでもない。
でも主人公に引く。そんなストーリーでした。
最初こそ真面目で大人しい印象の主人公ですが、大金に関してけっこう能動的な動きを見せるんですよね。
そもそも、大金を持ち帰って山分けするための「シンプル・プラン」を提唱したのが主人公ですから。
読んでて「お前が言い出すんかい!?」とビックリしました。
まあ、他ふたりが馬鹿ですから、唯一地に足着いている主人公が先導しなければ始まらないという側面もありますが…。
主人公は最初、善良で平凡な一般市民でした。それは間違いありません。
だからこそ、ストーリーが進むにつれて、主人公の中で「悪事へのハードル」がどんどん下がっていくのがすごくリアルで怖かったです。
そのハードルはガクッと下がることもあれば、色々問題が生じて、それを乗り越えようと苦悩する中で自然に下がっていくこともあり。
どちらにしても、機会さえあれば自分もこうなるかもしれない恐怖みたいなものは、『シンプル・プラン』を読んでいる間、常に感じました。
「根は善良な一般人」が「身の丈に合わない大金」を「不法な方法で入手」してしまった以上、『シンプル・プラン』に真のハッピーエンドはあり得ません。
ただ、どういった結末に着地するのかは……ぜひご自身の目で確かめてみてください。