32.『堕天作戦』山本章一
残酷でどこか美しいダークファンタジー。
▼『堕天作戦』はこんな作品!
・人類と魔人が争う世界を、主人公の不死者が渡り歩く話
・世界観の説得力が凄まじいダークファンタジー
・WEB漫画総選挙2019で第3位に輝いた漫画
正直、表紙でちょっと損してると思う…
『堕天作戦』のあらすじ
人類と魔人が争いを繰り広げる世界。
主人公である不死者・アンダーは人間側に属していたが、「再利用が効く武器」のような酷い扱いに精神がすり減り、廃人同然になったところを魔人に捕らえられた。
しかし魔神陣営でもまた、「実験」と称した処刑行為の繰り返し。
もはや人としてのほとんどの感覚が鈍磨していたアンダーだったが、彼と共に刑に処された魔人の少女・レコベルの"魔法"、そして彼女の望遠レンズで「星型の星」を見つけたことによって、意思と感覚を取り戻す。
そしてアンダーは、自分の不死性の謎と、空に浮かぶ「星」の謎を究明すべく、世界の放浪を始めた。
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『堕天作戦』の感想・レビュー
『堕天作戦』は世界観が本当に凄まじく、様々な国や勢力が関係しあっており、かなり複雑です。
しかも「人間陣営」と「魔人陣営」に分かれているだけなら単純なものを、「人魔混合の勢力」や「人間陣営だが改造人間が多く、魔人とも手を組む勢力」など、もう色んな勢力がいて、最初は何が何やら…です。
ただでさえ複雑な情勢が、物語が進むにつれ変化していきますしね。
作者さんの頭の中は一体どうなっているのでしょうか……頭の中にもうひとつ世界が存在しているとしか思えません。『堕天作戦』の中では、この世界とは完全に切り離され、独立した世界が完成されています。
そんな少々理解が難しい世界観ですが、それが『堕天作戦』という物語から離れる要因にはなり得ない…理解できるまで何度でも読み返してしまう…そんな強い引力がある作品です。
『堕天作戦』はヒューマンドラマやキャラクターの表現もまた非常に繊細で魅力的です。
戦争真っただ中な世界ということもあって、悪人率もまあまあ高いんですが、誰のことも嫌いになれないんですよね。
たとえば、
主人公を処刑しまくり、自分の右腕だったヒロインをも処刑したMP全振り魔人、ピロ。
ゲームのスコア数に見立てて次々に人を殺す人間の女性、ルビー。
自分の恋を貫くために、他人を操り他人の手で殺戮を繰り返す魔人の少女・ポーラ。
こんな一見ヤバイ悪人たちにも、同情できる面があり(ない人もいますが)憎めない愛嬌があって、シュールギャグや過去編が挟まるタイミングも完璧で…。
世界観もキャラクターの多くも、現代日本とはかけ離れた倫理観の元に成り立っているのに、感情移入先が多いんですよ、とても…。
皆幸せになってもらいたい…。
でも、それを許してくれるような世界観ではないんですよね…。
(ちなみに、主人公は主人公で「自分から見ればこのくらいで死ぬ方が悪い」と人間に石をぶつけたり、主人公に生きる力を与えたヒロイン・レコベルですら「知的好奇心を満たすためなら手段を選ばない」面があったりと、倫理観の欠如が見られます。善って何だろう、悪って何だろうね…。)
また『堕天作戦』は主人公・アンダーが「不死や星の謎を追う」というのが主軸のストーリーなので、
暗中模索でとにかく動く
→ヒントを見つける
→仮説を得る
→仮説が否定される
→それを足掛かりに新たなヒントを探す
→… という、ミステリー作品的な展開があるのも魅力的です。
複雑な世界観も相まって、考えながらじっくり読むのが本当に楽しい作品です。
惜しむらくはこの『堕天作戦』、長らく休載中(※2021年10月時点)ということですね…。
休載理由は体調不良とのことで、連載再会のめどは未だ立たず…。心配です。
山本章一先生、『堕天作戦』本当に大好きです。2冊買うくらい好きです。連載再会の日をいつまでもお待ち申し上げております…。
この記事でご興味持っていただけた方がいましたら、ぜひ!ぜひ!『堕天作戦』を読んでみてください!!
既刊5巻です!!
そして続きを待ちわびる切なさ・苦しみを共に味わいましょう!!
最後に、『堕天作戦』の作者・山本章一先生の読み切り漫画『燃える追い人』のリンクを貼っておきます。
最古の天才の話 1/21 再掲 pic.twitter.com/MpK4m4ZPQn
— 『堕天作戦』公式 (@datensakusen) 2019年9月6日
天才的原始人が、ネアンデルタール人の女性を追う話です。
ストーリー、特殊なコマ割り、後半への盛り上がり…どれも神がかっています。
私も今読み返して、鳥肌を立てたり燃えたり泣いたりしました。
リンクから無料で最後まで読めますので、ぜひ。