16.『もやしもん』石川雅之
主人公は、菌が見える"だけ"の平凡な若者。
▼『もやしもん』はこんな作品!
・「かもすぞ」で有名
・肉眼で菌が見える農大生の物語
・ゆるキャラ、雑学、女装男子…ジャンルのごった煮なローファンタジー
『もやしもん』のあらすじ
「肉眼で菌が見える」特殊能力を持つ主人公・沢木直保は、幼馴染の結城蛍とともに東京の農業大学に進学した。
そこで祖父の友人・樹教授に能力を買われ、樹ゼミに顔を出すようになる。
菌が見えるせいで他人と距離を置きがちだった沢木は、樹ゼミで個性的な人々と出会い、彼らと様々な騒動を乗り越えて、少しずつ成長していく。
ゆるキャラ、雑学、女装男子、ロリータファッションに旅にラブコメ……いろんな意味で情報量がハンパない名作漫画!
『もやしもん』の感想・レビュー
私はとにかく『もやしもん』の絵が好きで…!!
絵柄がリアルとデフォルメの間のちょう~~どいい塩梅なんですよね…。
特に影の付け方がものすごく繊細で。
影はシャーペンで描かれてるんですかね…?それとも丸ペン?
あの繊細な濃淡と絶妙なカスレ具合、アナログ絵描きの端くれとしてはたまらないものがあります。
それと、『もやしもん』にはゴスロリファッションやロリータファッションが多く登場するのですが(農大物語なのに意外でしょう!?)、フリルの書き方もまた素敵なんですよね!!
描き方自体はもちろん、楽しんで描いてる感じが伝わってくるのがまた良いんですよ…。
『もやしもん』はロリータ系ファッションだけじゃなく、全体的にファッション(特にレディースファッション)のセンスの良さと描写の精巧さが光っていて、服が好な人にもたまらない作品だと思います。
ストーリーについてですが、『もやしもん』は主人公が活躍しない作品として有名(?)です。
漫画って普通、どうやっても主人公が目立つじゃないですか。だって主人公を中心にした物語なんですから。
『もやしもん』なんて特に、地に足着いたリアルな世界観の中で、主人公ひとりだけが特殊能力持ちなんだから、なおさらです。
でも『もやしもん』では、主人公は大抵メインストーリーの中心にはいません。
「菌が見える」という特殊能力を持ちながら、基本的には物語の中心から少しはずれたところに立っているんですよね。
そこが『もやしもん』の特徴であり、魅力のひとつだと思います。
『もやしもん』の主人公・沢木は、菌が見えるだけで、他の面においては突出したものがない、ただただ一般人なんです。
菌が見える力は特殊能力と言っていいものですが、それは平たく言えばひとつの個性でしかありません。
主人公だから、菌が見えるから、いきなり何かに大成功したり、事件を乗り越える力が湧いたり…そんな出来事は一切起こりません。
ただ、大学に入学したばかりのひとりの若者らしく、友人知人や年長者たちから少しずつ何かを学び取っていきながら、知らない道を1歩1歩進んでいくしかないんです。
そんな現実に即したストーリーだからこそ、沢木のごく小さな変化や成長がすごく輝いて見えます。
そしてその積み重ねの果ての、最終巻での大活躍には、本当に胸が熱くなるんですよね…。
ところで、私は特に寝込んでいるときに『もやしもん』を重宝しています。
『もやしもん』に含まれる知識量は凄まじく、時には欄外までギッチギチに詰め込まれていることも。
助かるんだこれが…。
寝込んでてヒマになった時、小説読むほどの元気はない、かといって漫画だと次の巻取りに行く元気がない…ってコトありません?
その点『もやしもん』だと、漫画自体はすごく面白くて読みやすいし、所々に小説ばりの情報量があるもんだから1冊でたっぷり時間を潰せるし、ていうか絵が好き……ってメリットだらけなんです。
とはいえ、メインストーリーを読む分にはぶっちゃけ読み飛ばしても構わない情報も多々あるので、「えっ文字が多い漫画なの?」と思わず、ぜひ気軽に読んでみてくださいね!