12.『空中ブランコ』奥田英朗
悩みがある人に、ぜひ読んでほしい小説
▼『空中ブランコ』はこんな作品!
・奥田英雄の「精神科医・伊良部シリーズ」の2作目
・テーマは精神科、でもコミカルな連作短編!
・読むと悩みが軽くなるような作品
『空中ブランコ』は奥田英朗の「精神科医・伊良部シリーズ」の2作目ですが、前作『イン・ザ・プール』を読んでいなくても全然問題ナシですよ!
『空中ブランコ』のあらすじ
サーカス団員・山下公平は今日も空中ブランコを失敗した。
原因は分かっている。ペアの内田が自分に嫌がらせをしているのだ。
内田のことを周りにボヤいても、周りは公平に「疲れてる」「少し休め」と言うばかり。
ある日、何度となく繰り返された内田のミスに腹を立て、公平は内田を殴ってしまった。
それをきっかけに内田は精神科行きを勧められ、渋々「伊良部総合病院神経科」を訪れた公平。
神経科のドアを開けると、そこにはでっぷり太った中年男が胡坐をかいていた…。
飛べなくなった空中ブランコ乗り。
先端恐怖症のヤクザ。
義父のヅラを死ぬほど取りたい医者…
個性豊かな症状、個性豊かな患者たちを、トンデモ精神科医・伊良部が治療(?)していく!
『空中ブランコ』の感想・レビュー
精神科医・伊良部はとんでもない医者です。
明らかに自己管理できていない体型、自己中心的で幼稚な性格。
「医者失格(というか大人失格)」と言いたくなるような言動も少なくありません。
でも不思議と、読んでいてイラっとはしないんですよね。
作中でも言われていますが、伊良部を見ていると、珍しい動物でも見ているような気持ちになります。謎の癒し効果があるというか。
伊良部は基本的に患者のことなんか全然考えていないような行動が多いですが、そんな彼からふと的確なアドバイスが飛び出して、ハッとさせられることもしばしば。
また、『空中ブランコ』の患者たちを見ていると、本人から見たら人生のどん底のような状況も、はたからは冗談みたいみ見えることもあり。
何か悩みを持つ人にとっては、それを小説という形で客観的に教えてもらえるのは救いにもなるのではないでしょうか。
ま、それを自覚したからといってパッと解決しないからこそ人は悩むんですが…。
でも、悩みから快方に向かっていく人の姿を見ることは、悩める人にとってプラスになるはず。
『空中ブランコ』は何かに悩むすべての人にオススメしたい小説です。