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10.『用心棒日月抄』藤沢周平

 

犬の番、少女の送り迎え…一風変わった用心棒家業。

 

 

▼『用心棒日月抄』はこんな作品!

藤沢周平の、江戸を舞台にした時代小説

『用心棒日月抄』シリーズの1作目

訳アリの脱藩浪人の物語

 

 

 

 

『用心棒日月抄』のあらすじ

 

主人公・青江又八郎は剣の腕が立つ青年だが、訳あって婚約者の父親を斬殺してしまい、脱藩して江戸に辿り着く。

そして国許から送られてくる刺客と戦いながら、糊口をしのぐため用心棒として働くことになる。

いつか婚約者である由亀(ゆき)が、「父の仇」と己を斬りに来る日を待ちながら…。

 

そんなシリアスな実の上なのに、青江の上に降ってくるのは、一風変わった仕事ばかり。

犬の番に、少女の送り迎え…さらに気付けば、大きな争いの渦中にも入り込むことになり…。

歴史が苦手な人でも楽しめる、人情味あふれる時代小説。

 

 

 

『用心棒日月抄』の感想・レビュー

『用心棒日月抄』は主人公がカッコいい!

若い中にもにじみ出る渋さ、そこに「訳アリの脱藩浪人」という危うさがプラスに働き、なんとも魅力的なキャラクターに仕上がっています。

その割にちょっと抜けているというか、詰めが甘いような点も少々あり、そこがまた良いギャップとして作用しています。

 

また、『用心棒日月抄』にはもうひとり、細谷という腕利きの剣士が登場するのですが、この人の存在がストーリーをより面白くしています。

細谷は妻子持ち(しかも子だくさん)で大酒飲み、ひげ面であっけらかんとした性格という、主人公・青江とは正反対と言っていいキャラクターです。

 

だからこそ、青江との取り合わせが映える

お互いの良いところが引き立つんです。

彼らは「相棒」と言えるほどの関係ではありませんが、やがて男同士の友情の熱さを垣間見ることができる、良い関係性になっていきます。

 

 

ストーリーも、ただの用心棒ではなく「犬の用心棒」「夜鷹(売春婦)の用心棒」など変わった仕事が多く、時にコミカルで一層惹き込まれてしまいます。

私が特に気に入っているのは、主人公・青江が唯一自主的に行った用心棒仕事の話「夜鷹斬り」。

ラストは何とも言えない切なさがあり、涙がこぼれました。

 

 

『用心棒日月抄』では江戸の暮らしも丁寧に描かれており、読んでいて別の時代に迷い込んだような不思議な気持ちになります。

時代小説初心者はもちろん、江戸・幕末あたりの時代が好きな方も、きっと楽しめるのではないでしょうか!