4.『お茶にごす』西森博之
茶道の世界に異分子・ヤンキーが馴染む。
『お茶にごす』というタイトルの付け方が本当に天才的…。
▼『お茶にごす』はこんな作品!
・シュール系ギャグが魅力の学園コメディ
・クスッと笑ってホロッと泣ける
今回ご紹介する『お茶にごす』、2021年秋からは実写ドラマが放送されるとのことです。(ビックリしました)(この勢いで『天使な小生意気』完全版もっかい出していただけませんかね!?買うので!!)
『お茶にごす』のあらすじ
最強の不良として恐れられ、“悪魔(デビル)まークン”の異名を持つ主人公・船橋雅矢。
しかし彼には密かなる願いがあった。
それは、高校入学を機に不良から脱却したい、喧嘩をせず平和に暮らしていきたい、というもの。
逆高校デビューともいえる船橋の願いは、彼の知名度の高さや風貌の凶悪さから前途多難だった。
そんな中、茶道部の部長・姉崎奈緒美から部活動勧誘を受けたことをきっかけに、船橋は茶道部に入部する。
文化部には異色の存在である船橋は周囲から嫌煙されたが、次第に「優しい人間になってやる」という意気込みの真剣さが伝わっていき、周りには少しずつ理解者や仲間が増えていく。
『お茶にごす』の感想・レビュー
『お茶にごす』のストーリーは純文学的で、「〇〇編」と題されるような大きな出来事が起こったり、危機的状況に陥ったり…といったことはほぼありません。
でもそこが良いんです…!!
「最強の不良」と恐れられた主人公・船橋ですが、彼の悩みといえば「人の気持ちが分からない」だったり、「優しいって何だろう」だったり、「初恋について」だったり、「なんかこう」としか表現できない感情だったり…
すべて多くの人が一度は抱えたことがあるような、ありふれた若者の悩みでしかないのです。
そこにすごく共感してしまいますし、強くて周りから恐れられている船橋が「そんなこと」で真剣に頭を抱えている姿を見ていると、「なんかこう…なんかこう…!」という気持ちになります。
あと『お茶にごす』は、メインキャラクターが皆あらゆる面で一途なところも、読んでて気持ちがいい理由のひとつですね。
主人公をはじめ、結構思い悩むシーンが多いのに、読んでて全っ然モヤモヤしないのはそのおかげでしょうか。
『お茶にごす』はヤンキー漫画でおなじみの西森博之作品です。
だからやっぱり喧嘩シーンもちょいちょいあるのですが、全体的な空気感は静かでフラット。
逆に大きな事件はほとんど起こりませんが、キャラクターたちは小さなことで悩んだり悔んだりし、その感情の機微がダイレクトに伝わってきます。
そこもまた純文学的…。
『お茶にごす』は読むタイミングによって泣けるポイントが変わる漫画だとも感じます。
時間を置いて何度も読み返したくなるような作品です。
シュールギャグ好きにはツボに刺さるシーンが多いと思うので、ぜひ!
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