3.『天使な小生意気』西森博之
美少女の学園ラブコメヒューマンドラマ
~ヤンキーとファンタジーを添えて~
▼『天使な小生意気』はこんな作品!
・伏線満載!伏線回収も鮮やか!
・笑って泣ける深い作品
『天使な小生意気』のジャンルは一言では言い表せません。
学園ラブコメが主体ではありますが、舞台が学園から離れることも多く、ヤンキー漫画の素質もあり、ファンタジー要素もありつつ、深く胸を打つヒューマンドラマが魅力な……複雑な味わいがある作品です。
『天使な小生意気』のあらすじ
物語は、主人公である絶世の美少女・天使恵が、親友の華花院美木と共に剣ヶ峰高校に入学する所からはじまる。
そこで悪名高いヤンキー・蘇我源造をはじめ、個性的な仲間たちに出会うが、恵はひとつの大きな問題を抱えていた。
恵は元・男だったのである。
少年・恵は9歳の頃、偶然手に入れた「魔本・天の恵」に「男の中の男にしてくれ」と願った結果、「女の中の女」にされてしまった。
恵が少年だったことを覚えているのは恵自身と、当時隣にいた美木だけ。
美木のツテで、恵を女にした魔本が剣ヶ峰高校にあると知った恵たちは、意図して剣ヶ峰高校に入学したのであった。
恵に惹かれる男たちと、「いつか男に戻る」と息巻く恵。
彼らに降りかかる事件や災難、それ乗り越えた先には何があるのか!?
『天使な小生意気』の感想・レビュー
私は全ての漫画の中で、『天使な小生意気』が一番好きです。
『天使な小生意気』について語りたい魅力ポイントは沢山あるのですが、延々書き連ねてしまいそうなので、3つに絞りました!
- メインキャラクター全員が主人公!
- 主人公・恵の魅力
- 緻密な伏線と回収の美しさ
1.メインキャラクター全員が主人公!
『天使な小生意気』の主人公は天使恵。これは間違いありません。
しかし、主人公を取り巻くバイプレーヤーたちもまた主人公である。と言えるほどの深みを持った作品なのです。
特にご紹介したいのが、「普通の人枠」藤木一郎と、「主人公の親友枠」華花院美木。
藤木は自他共に認める普通の男子高校生で、自身の平凡さにコンプレックスすら感じています。
しかし彼は、「普通なら足が止まる場面で一歩踏み出す勇気」を秘めた人物なのです。
その素質はなんと、第1話から垣間見ることができます。
誰もが息をのむような絶世の美少女・天使恵に、クラスメイトたちが「話しかけてみたい…でも…」とためらう中、最初に声をかけるのが藤木一郎なのです。
また、惚れた相手(=主人公・恵)のために、誰もが恐れる不良・曽我に一発拳を入れる精神的な強さも秘めています。
彼のこういった素質は『天使な小生意気』の中でたびたび発揮され、時には困難な状況を打開する1手になることも。
彼の漢気が炸裂する終盤の活躍は、涙なしには読めません。
そして「主人公の親友枠」華花院美木。
絶世の美少女の親友枠なのですから、主人公の引き立て役か、主人公のサポート役に徹するか…というのが悲しいセオリーなのですが、美木ちゃんはそんな枠には収まりません。
むしろ『天使な小生意気』のストーリーが大きく動くとき、その中心には必ず華花院美木がいるのです。
彼女の立ち位置は「主人公の親友枠」というよりも、もうひとりの主人公…いえ、『天使な小生意気』のヒロインと言っても過言ではありません。
主人公・恵は家が富豪なのですが、美木がそれを上回る財閥の娘という所も、彼女がただの引き立て役ではない点を強調しています。
2.主人公・恵の魅力
主人公の魅力もまた、『天使な小生意気』の魅力の深さに直結しています。
主人公・恵は頭脳明晰、運動神経抜群、家柄も良く、さらには誰もが振り返る絶世の美女…という、もうどう振舞おうと嫌味に見えるようなステータスの持ち主なのですが、このハイすぎるスペックに上手~く噛み合う性格をしています。
男勝りで喧嘩っ早く、しかし良家の出ゆえの滲み出る品性があり、素直で短絡的、そして…自分の道を貫いている。
美しい少女でありながら「男に戻る」という意思を持つ、その危ういバランスの上でなお己の信念を貫く姿には、何度読んでも胸を打たれます。
現実でもフィクションでも本心を隠して生きる人間が多い中、恵は胸中をほとんど開けっぴろげにしてくれる点も、気持ちがいい読み心地のゆえんでしょうね。
3.緻密な伏線と回収の美しさ
この作品には実に多くの伏線が張り巡らされており、そのすべてが鮮やかに回収されています。
その展開の美しさ!!
まるでミステリー作品を読んでいるかのような快感があります。
この点についてはあまり多くを語ると楽しみが減ってしまうと思うので、ぜひご自身で確認してみてください…!
…もしかして、私の紹介の仕方だと重いシリアスな作品のように感じられたかもしれませんが、それは違います!
作品全体にはコミカルで軽い空気が流れており、本当に気軽に読むことができます。
ある程度シリアスなストーリーにも要所要所にギャグが潜まされており、暗い気持ちにはなりません。
そしてギャグの空気が散りばめられているからこそ、本当にシリアスな場面が映えます。
『天使な小生意気』は絵柄が未熟な感じなのがまたイイんですよね。
逆に恵の「絶世の美女」設定の説得力が増す絵柄で、とても好きです。
ぜひあまり構えず、軽~い気持ちで手に取ってみてください!
ちなみに『天使な小生意気』の中には『今日から俺は‼』の主人公2人の姿がチラッチラッと登場するので、今日俺ファンの方はぜひ探してみてくださいね。